子育て通信 バックナンバー
   

 

園長の本音トーク 16 「明日へ ― 無駄な人生はない。」

  (2010年3月8日)

 冬季オリンピックは、「夢は、努力すればするほどかなう」というメッセージを感動とともにつたえました。様々な困難や挫折を通して、自分に負けないで頑張った姿は、本当に心うたれます。
 一方、今春卒業予定の高校生就職内定率は昨年よりも低く、全国で4.6万人がまだ決まっていません。
 富山は91%ですが、北海道56%、沖縄46%と差があり、県内企業状態の地域差が浮かび上がっています。
 保育園時代は、ひとりひとりの子どもがそれぞれに輝いています。
 小、中学校、そして高校となるにつれ、家庭や地域、社会の状態がより反映されていきます。
 たった1年違うだけで就職氷河期です。
 又、自己責任が当たり前のように言われ続けている中で、「仕事を解雇されたり、仕事がないのは自分の努力が足りないから」と自分を責め、親にも友人にも社会にもSOSのサインを出さないで、ひとりで抱える30代が増えているといわれています。
 何か、人や自分への評価が、極端に厳しくなっているように思えます。
 ○○バッシングみたいに、違うと排除する、みんなと同じでないと安心できない、多数は正義という風潮がとても強くなっているように感じます。
 努力することは大切なこと、困難を乗り越えて成長する物語に感動しますが、それが、一方で、努力しない人は自己責任が足りないと切り捨てることにつながるのだとすればとても危険なことのように思います。
 活躍している人、元気にまっすぐ歩いている人だけでなく、ジグザク曲がって歩いている人も、歩くことに疲れて休んだり、止まっている人、後ずさりしている人も、それぞれの「今」が無駄でないようにするためには、個人の努力でなく、地域や社会のありようを深く考える責任のある大人たちがどれだけいるかによります。
 子どもは大人の鑑(かがみ)です。
 「正義、正義」の多数の名の下に、少数の意見や違う価値観を排除するのでなく、痛みを受け止め、それぞれが、「明日」へのつながりを模索する寛容な大人たちの姿が、こういう時代だからこそ求められています。
 この年になって、いまさらですが、「大人の責任」って何だろうと戸惑います。
 どの子どもも保育園時代の心からの笑顔が青年になっても消えないような「明日」になるよう、微力ですが力をつくしたいと思います。
 今回で連載は終了です。お付き合い、ありがとうございました。

 

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